元・海外旅行ツアコンの「添乗員ノート」

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ノーモア「旅の恥はかき捨て&観光資源の安売り」

      2016/05/05

 

旅は非日常で、ふだん得られない貴重な体験を与えてくれるもの。だからこそ、訪れたい土地の数々をいつまでも美しいままに保つため、訪問者が留意すべきことがあります。
今回は辛口の内容となりますが、旅行会社・旅行者・添乗員・観光地の方を否定するものではなく、より良き今後のために期待をこめて書かせていただきました。

 

【中綱湖の桜を撮影するカメラマンの現状】

中綱湖の記事に掲載した画像のご提供者様から、撮影時のエピソードをお聞きしました。

それによると、3年前に中綱湖に撮影に行かれた時には今ほど多くのカメラマンはいなかった、
ネットで紹介されたことで急増化したようで、200人くらいのカメラマンが午前4時の時点で場所取りをしていたそうです。
近所には民家もあり、真っ暗で私有地かどうかの判別も難しい状態での場所取りが地元の方の迷惑になっていないか、気になったというお話でした。
車のエンジンもかけたままだったり、構図の邪魔になる自然の草花や枝を切ったり、という光景も目にしてしまった、とのことです。
中綱湖畔には民宿もありますが、カメラマンの多くは車中泊しており、地元に利益をもたらしていません。
まだ観光地化されていない土地ですので観光商業施設がほとんどなく、よそから来た旅人が地元に利益をもたらす機会も少ないようです。
朝になれば屋台が出たそうですが、そのタイミングにはカメラマンはほとんど残っていなかったのだとか。

 

【自然環境を観光資源としての町おこしの弊害】

大町市では中綱湖の桜を大切な観光資源として、新たに苗木を植える準備もしているようです。
町おこしとしては、多くの観光客に来てもらいたいでしょう。
同時に、大切な自然資源や周辺の環境を守って維持しなければ、一時的に人気が出ても、やがて衰退していきます。
そこを重く考え、貴重な環境を決して安売りして消耗させることのないようにお願いしたいと思います。

日本中の観光地が俗化されてしまったのは、安易によその土地を訪れてしまうようになったことにも大きな原因があります。
訪れる側に「訪問先のありのままの姿を尊重しなければならない、いつまでもこのままで」
という気持ちが強ければ、観光の利便と観光資源の価値の維持の両立は可能だと思います。
これ以上、俗化され個性を失った観光地を日本に作らないですむよう、訪問者は「地元のルール」に敬意を払いましょう。
それが旅行者にとっての利益にもなるわけですから。

 

【観光と地域の環境維持の両立について】

観光と地域の環境の維持の両立、なかなか難しい面があります。
特に国内において、それを感じます。
地方色豊かな文化と自然が日本の旅の最大の魅力ですが、観光ビジネスを最優先にしてしまうと、
地方は個性を失っていきます…
どこに行っても同じようなお土産、同じような観光施設があふれている印象がありますし、
観光客の利便を推進して「観光地としてのステイタス」を上げようとするほど、同じようなホテルが並ぶようになります。
特に大手のホテルチェーンを誘致する際には、十分ご検討ください。
沖縄においては大きなホテルの大半が「本土資本」であり、利益があまり沖縄に還元されていません。慌てて観光地化を進めることは、長期的には地域にとって得にならない場合もあります。
訪問者にとっても「地域性の魅力」が薄れてしまい、残念なことです。
(地元密着の企業でなくても土地独自の魅力を伝える努力を怠っていないことも、よくわかっております。その上であえて書いております)

素敵な場所を多くの人に知ってもらいたい、という気持ちと、
人が多くなると魅力が損なわれるから内緒にしておきたい、という気持ち、
これは私にもあります。
旅行情報を提供する側・自分が旅行する側、双方の気持ちで。
画像ご提供者様も同様で、前回の記事では複雑な思いもされたのかもしれません。

 

【地域の自然・文化で町おこしを計画されている団体の方へ】

中綱湖に限らず、地元の観光資源をPRして町おこしをしようと計画されている地方の皆さんは、
「ここでは地元のルールに従ってください」
という毅然とした態度で臨むことが、長期的にその観光地の価値を高めることを忘れないでください。
大切なものを切り売りして一時的に繁栄することではなく、将来にわたって価値が残り、育っていくような計画をお願いします。
失われたものを取り戻すのは大変な時間と労力が必要ですし、努力によって回復できなくなる場合も多いです。

 

【旅を提供・旅を楽しむ皆さんへ】

どこに行っても似たような観光地にしてしまったのは、訪れる側の責任でもあります。
ツアーを企画した旅行会社、よその土地にお邪魔させていただく緊張感を忘れた旅行者、
アンケートの結果に縛られてお客様にマナーを指導すべき時に徹底できない添乗員、
いずれも、魅力的な日本の地方を「観光ずれ」させ、俗化してしまった罪があります…

旅はしょっちゅう行けるものではないので、
「今しかない」という欲張りさがどうしても出てしまいがちです。
日常を離れた場所では判断力も鈍ります。
その土地についての知識が不足しているせいもあり、いつもはしないマナー違反やトラブルも、気をつけていても起こしてしまいやすくなります。
素晴らしい旅先を「消費」するのではなく、自分もそこに関わったひとりとして縁を結ぶ、
いつまでも美しく豊かであることを願う。
そんな気持ちを、旅に関わる人はみな、忘れてはならないと思います。

 

【旅行者を受け入れる土地の人の気持ち】

中綱湖の画像ご提供者様が、地元の方の貴重なご意見をお伝えくださいました。
(中綱湖の人に限ったことではないようです)
「よそから人が来てくれることは嬉しい、でも、どう接したらいいかわからない」
観光ズレしていない素朴な魅力を持つ土地ほど、そう感じるのではないでしょうか。

ユネスコ世界遺産に登録することを嫌がる地方もある、という話を以前に聞いたことがあります。
儲かるのは観光業に関わる人だけ、その他の地元民にとっては知らない人が自分の生活圏に入ってきて荒らしていく迷惑のほうが大きい、だから嫌だ…と。
これは日本に限った話ではありません。

沖縄の道路で、こんな垂れ幕を見かけた記憶があります。
「観光推進月間 旅行者に親切にしましょう」
裏を返せば、旅行者に親切にする気持ちになれない沖縄県民が少なくないから自治体が呼びかけている、ということでもあるのではないかと感じました。
観光産業が重きを占める沖縄においても、地元の人の感情は複雑かもしれません。
沖縄を訪れて出会うほとんどの方には、とても親切にしていただいた記憶しかありませんが、
その分、いろいろとご迷惑やご負担をかけたこともあったなあ…と反省しています。

 

【ノーモア・「旅の恥はかき捨て」】

添乗員をしていた当時は、ここまで旅行産業に批判的なことは表だっては言えず、
さりげなく「地元の文化や環境を尊重し、マナーを守っての行動をお願いします」程度にしか言うことができませんでした。
しかし、旅行を企画する会社も添乗員も本心は「お客様に満足していただきたいけれど、地元に嫌われること・損害を及ぼすことはしたくない・してほしくない」はず。

カメラマンに限らず、「よその土地を訪れる立場」の全ての人はいまいちど、謙虚な精神に振り返りましょう。
「旅の恥はかき捨て」ということわざは、「旅先では恥ずかしいことをしてしまいがちだから自省しなければならない」という意味です。

 

 

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